2012年10月17日

記憶6


それは6、7年前の出来事。
小さい子供はだれでも、水遊びが大好きだ。
とにかく飽きずによく遊ぶ。
同じ幼稚園のママさんから噂に聞いた公園は、水が
流れる滑り台あって、暑い日に子供が遊ぶには最適な
場所らしかった。
断っておくが、近隣の住人以外は知らないような
ローカルな公園だ。ぜひ今度そこへ行ってみよう!という
ことになり、休みの日に車に乗ってその公園へ向かった。

5分ほど車を走らせた。
場所はちょっと分かりづらい、大きなスーパーの裏に
隠れた中通りに面していて、初めて行くには事前に下調べを
しておかないと見つけられそうもないようなところだった。

ここじゃないかい?と言いながら車を公園のフェンスの
あたりにゆっくり横付けする。開けた窓から子供達の
はしゃぎ声が聞こえる。
その瞬間、説明のつかない不思議な感覚に襲わた...しかし
その感じが何なのか自分にも分からないまま、車を降りて
歩き出した。



ゆるい坂になった公園の芝生を見て、はっきりした。
まったくの不意打ちだった。自分は随分昔にここに来たことがある...。

僕の両親と兄弟は、僕が小学2年の二学期に北見から札幌に引っ越して来た。
兄は小学5年生、姉は中学1年生だった。
ある夏の日に、新しく出来た公園の記事が新聞に出ていた。(ローカルねたでも載せていたのか?)
そこには水の流れる滑り台があって、子供にとってはそれはそれは夢のように楽しい公園だ、と。
(やはりこの場合も)ぜひ今度そこへ行ってみよう!ということになり、休みの日にその公園へ向かった。
ただし違うのは、以前にも書いた通り、我が父は車の免許を持っていなかったということだ。
今考えると、家から公園まで車なら15~20分というところ。しかし当時はバスで1時間かけて大通りまで行って
それから地下鉄南北線に乗って…といった具合。(多分)澄川で降りてタクシーに乗ったのだと思う。

家族5人、札幌の土地勘も無く、タクシーのおじさんだけが頼り。とはいえ完成直後の公園なんて、おじさんにも
分かるわけがなく、澄川周辺を長い時間、ぐるぐると迷子になってしまった。
そして次第に不機嫌になる5人。

家を出てどのくらい経ったか分からないが、すっかり疲れ果て、西日がキツくなったころにやっと見つけた。

そこには水の流れるチャチな滑り台が3本ほど、ゆるい坂を下って深さ30センチもないくらいのプールに伸びていた。
たくさんの幼稚園児が歓声を上げて遊んでいた。
母親は言った。せっかく来たのだから遊びなさい!
兄と僕はしぶしぶ2本くらい滑った。中学生の姉は木陰に立って僕らを眺めていた。

30年後、幼稚園児の我が子は、めいっぱいはしゃいで水を被って遊んだ。

しかし子供の頃の夏の日とは、どうしてこうもせつないのだろう。                                                 mct.