もうすぐ誕生日を迎える子供と話していて
改めて考える、自分にもあった16歳という日。
なんでもなく過ぎていく毎日だったが、きっと
今に受け継がれていると思えるものたち。
レコード棚。手書きのカセットテープ。
お年玉で買ったYAMAHAの中古、レスポールモデル。
FENDERのアンプ。
シティボーイになるためのバイブル『POPEYE』。
南3条の古着屋。一つボタンのキャメルジャケット。
Leeのジーンズ。
兄貴に貸しているうちにどこかへ消えた革の手下げカバン。
高木商店で買うダブルソーダ。
初めてのお下がりでないブリジストン自転車にまたがり
学校帰りに寄る貸レコード屋。
映画の半券、チラシやポスター。凍えながら外で並んで待つ映画館。
ゴムバンドが付いた小さな手帳。紐を引っ張って芯を出す赤鉛筆。
いつものバス停。乗り継ぎのバスを待つ、和菓子屋の店先。
バスを逃した後の長い夕暮れの道。
ブーツ。コンバーススニーカー。ボーリング場の瓶コーラ。
チューインガム。なかでもクイック・クエンチ。
近所の床屋に行くのをやめて安っぽい美容室を予約する、一丁前なつもりの気分。
友達と入る、小さな喫茶店に漂う大人な気分。
冬の朝、暗いうちから聞こえる掃除機の音。
コーヒーの落ちる音。休みの日の朝寝坊。
母がいない時、自分で茹でる昼の蕎麦。止まない父の昼寝のイビキ。
深夜のMTV。ひとり、部屋で聴く山達のラジオ。
窓から見える三日月。明日を想う小さなため息。
もう一緒には使わなくなった、二段ベッドの片割れの寝心地。
ふと気がつくと傍にあり、なくなったら困るものたち。