2013年9月6日

記憶7



10代〜20代の頃は、今よりもよく映画館に行った。
須貝ビルは改修される前で、500円あれば
少し前に封切られた旧作を見ることが出来た。
札幌の街の中にも大小、様々な映画館がいくつもあって
本編以外にも、今日の映画はここで...みたいな
楽しみがあった。

独特のにおいを放つ安っぽい座席。
薄汚れたリノリウムの床。
ひび割れたテラゾーブロック。
チカチカ光る、青白いトイレの蛍光灯。

いまの映画館に猥雑さはまったく感じられない。
まったくワクワクしない。

それはイカした映画だけのせいではない。
あのころは映画が終わって外に出ると
街が少し違って見えた。
とてもいい気分だった。


                     mct.